看護師を取り巻く様々な「ハラスメント」といっても本当にたくさんの種類があり、それぞれに対応策も変わってきますよね。
以前はハラスメントとして誰も認識していなかったような事柄までハラスメントとして位置付けられてしまい、人と接するのが怖くなるぐらいなのですが、被害にあってきた人たちにしてみれば、ようやく救われる思いにもなられているでしょうから、良い事なのだと思います。
誰でもハラスメントをしてしまう可能性があります。そして誰もがハラスメントの被害者になってしまうこともあるのです。
ですから、被害者・加害者どちらにもならないよう、何がハラスメントなのか?そして被害にあったらどうしたらいいのか?を日頃から意識しておく事が大切なんだと思います。
結局、自分の身は自分で守るしかないのです。
あ、でも自分だけで解決しろといっているのではありません。
誰かに相談したり、助けを求めるのも、そういった最初の行動を起こすのは自分が決断するしかないという事です。
今回は、看護師の妻が苦労してきたハラスメント問題を夫の立場で勉強し、自分なりにまとめたものですので、専門家の意見ではありません。
ただ、身近な家族として真剣に調べたり考えた事ですので、それなりに共感していただけるのではと思います。
看護師の皆さん参考になれば嬉しいです。
Contents
看護師を取り巻く3つのハラスメント加害者について考えてみよう
まず最初に、誰からハラスメントを受けるのか?その加害者となりえる人たちのことを最初に考えたいと思います。
看護師の世界ではおそらく次の3つの対象からハラスメントを受ける可能性があるのではないでしょうか。
■患者からのハラスメント
■患者の家族からのハラスメント
■職場の同僚や上司、医師からのハラスメント
この3つに加え、このコロナ禍で、医療者を病原菌扱いするなどの差別意識を向けられるハラスメント等も心配され始めています。
社会や患者を守るため自分を犠牲にして頑張っている医療者を、あたかもコロナ感染源のように避けたりすることは根拠のない不当なものだと言えるでしょう。
ただ、このテーマは大きすぎるため、ここでは最初の3つに絞り進めていくことにします。
白衣の天使につけ込む「患者やその家族」からのハラスメント
看護師が受ける患者からのハラスメントにもいろいろなケースがあるかと思います。
患者特に入院患者が主だと思いますが、考えられる事例としては
●看護中の性的な発言や接触をしてくるセクシャルハラスメント
●看護師の能力や容姿など誹謗中傷する精神的な暴力
●看護師を殴ったりけったりする身体的な暴力
が挙げられるでしょう。大なり小なり、看護師の皆さんなら経験があり、中には精神的に傷ついたり怖い思いをした方もいるのではないでしょうか。
2017年の看護師協会の調査では、患者から受けたハラスメントとして、性的な言動(いわゆるセクハラですね)や身体的な攻撃が一番多かったようです。
私の妻も、以前小さな介護施設の看護師として働いていた時、1人で送迎までさせられて(それ自体おかしいですが・・・)、認知症の患者から暴力を受けたり、男性年配者の視線に恐怖を感じたりしたようです。そこは結局体を壊してしまい退職しましたが、私はそれでホッとしたものです。本当に何かあってからでは手遅れなのですから。
看護師は、患者の心身に寄り添い、いたわり看護することが求められますが、そこに付け込んでくる患者や家族がいるのが現実です。
また、本当に絶望したり、我儘になってしまっている患者は攻撃的になったりすることもあるでしょう。
勘違いしている患者は、看てもらっているのではなく、看させてやっているぐらいの態度をしてくる輩もいるようです。
たちが悪いのが、弱そうな看護師に対して付け込んでくることが多いのも特徴らしいです。
行き過ぎた接触や言動が無い限り、問題にしにくいため、ほとんどのケースで看護師が泣き寝入りするしかなく、一種の職業リスクともいえるものでしょう。
一般的に言われている対策
・毅然とした態度でその場できちんと患者(家族)に、注意すること。へらへらと笑ってその場を済ましてしまうと味をしめて何度も繰り返し、さらにエスカレートしてくる恐れもあります。相手になめられてつけ込まれない事が重要なのです。
・起ったことを自分で止めておかず、スタッフステーションで共有、申し送りし病棟看護師全体の問題にすること。その上で、そんな患者(家族)からは担当をはずしてもらうとか、必ず2名で看護にあたるなど対策を取ってもらいましょう。
注)若い看護師ほど、問題にすると上位者や先輩からそんな程度で問題にして!と怒られたり陰口されたりすることを恐れ、ひとり抱え込んでしまうことがあるようですが、勇気を振り絞って相談しましょう。また、上位者や先輩看護師の立場の人は、若い看護師ほど抱え込んでしまうことを前提に気を配ってあげて欲しいものです。
注)家族からのハラスメントは、医療ドラマでもよくあるように、「看護へのクレーム」が大半かと思いますが、その場合は、主任や看護師長、内容によっては看護部長などできるだけ上位者に相談し対応してもらうほうが賢明です。最悪、訴訟や悪質なSNSへの悪評投稿などをされる場合もあるからです。
いずれにしても、とにかく一人で悩まず、必ず周囲に相談することが最善の策なのです。
職場の同僚や上司、医師からのハラスメントが一番たちが悪い!
看護協会が2017年に調査した内容からは、看護師が受けるハラスメントの中で、同じ職場の仲間(医師、師長など上位者も含む)からのものが一番多いことが分かっています。
しかも日本看護師協会の調査で分かったことは、精神的な攻撃や人間関係からの切り離しなど、典型的な「陰湿ないじめ」に相当するハラスメントが多いことです。
この種のハラスメントは、学校で問題になっているいじめ問題と同様、わからないよう行われたり、グループで1人の弱者をターゲットにしたりする場合が多く、孤立し追い詰められていくケースがほとんどのようです。
さらに、これらの陰湿ないじめは、いくら注意指導したところで無くなるものではなく、いじめの中心人物(多くの場合お局様)か、ターゲットになっている人物がいなくなるしか解決できないのが現実です。
私の妻も含め、多くの看護師の方が悩んでいるハラスメントは、この種のものだと思うので、もう少しここは掘り下げてお話ししていきたいと思います。職場の仲間からのハラスメントにもいろいろなケースがあるかと思いますが、私が妻から聞いている範囲では、
●同僚や先輩、上位者からの精神的ないじめ
→無視、陰口、理不尽な指導や叱責、個人のプライバシーまで踏み込んだ嫌がらせ
●上位者(特に師長)からの仕事上のいじめ
→理不尽な叱責や評価、理不尽なシフト、仕事を与えない、人前での叱責など
●転職者へのいじめ
→転職したてでも仕事を教えない、理不尽な評価、無視
●マリハラ(マリッジハラスメント)、既婚者へのいじめ
→幸せなものへの嫉妬や逆恨みからの陰口、無視、理不尽な要求
●マタハラ(マタニティハラスメント)
→休みをなかなか取れない雰囲気にする、陰口
●医師からの理不尽な指示や指導、叱責
→理不尽な指示やパワハラ、必要以上の接触や性的な言動
といったものです。
以外に医師など男性スタッフからのハラスメントは少ないようです。圧倒的に、同じ看護師仲間でのいじめが多く、それで休職や転職まで追い詰められてしまう事が多いのです。
もう少しここは一つ一つ説明と対策を補足していきたいと思います。
同僚や先輩、上位者からの精神的や仕事上のいじめに関して
このいじめが実は一番多く、そして一番看護師が心身を壊し休職や転職をしてしまう原因となっているのだと思います。
私の妻が、何度か休職や転職を繰り返したのもこれが原因でした。
私たち看護師の夫から見ると、どうして看護師同志で足の引っ張り合い、攻撃をするのか理解に苦しむのですが、そこはやはり女性ばかりの職場、女性特有のいじめ構造ができてしまうのでしょう。
同僚が辞めてしまうと、シフトのしわ寄せが来て結局は自分達が大変になるだけなのですが、看護師同志のいじめやパワハラはどの職場でも必ず存在する問題のようです。
看護師はいつも精神的にも肉体的にもぎりぎりの中で働いているため、少しで気に入らないことがあるとすぐに爆発してしまうほど張り詰めた精神状態です。
患者にそれをぶつけるわけにはいかないため、どうしても同じ職場の同僚に矛先が行ってしまうのでしょう。
有り余った鬱憤が、家庭に、特に夫に向けられるので夫としてはたまったものではないのですが、そこは理解して受け止めてやる度量が夫には求められます。
どんな職場でも、仕事がてきぱき出来る人と、時間のかかる手際の悪い人といるものです。
看護の世界は手際やスピードが、そして正確性が求められます。どうしても手際の悪い(仕事のできない)人がターゲットになってしまうようです。
その職場に長くいる、いわゆる「お局様」的な存在の看護師は、その中でも一番たちが悪い存在のようです。
転職者へのいじめは、年齢に関係なく起こってしまう
転職者は、その職場に不慣れなのは当たり前。でも職場では即戦力として迎えられます。
ちゃんとした現場ガイダンスがある職場ならいいのですが、多くの場合、そんな余裕がなく、習うより慣れろ!状態で迎え入れられてしまうようです。
当然、すぐにてきぱきと動けるはずもなく、「どんくさい、つかえない!」と、古参の看護師からいじめの対象になってしまいがちのようです。
私が妻から聞いて腹が立つのは、妻よりずっと若い看護師が、その職場での勤務歴が長いだけの優位関係で、理不尽な指示をしたり、いじめてくることが以外に多いということです。
普通、年上で看護経験が上の人には経緯を払うものです。そんな教育を受けてきていない看護師が多いのでしょうか。
※これは私の偏見かもしれませんが・・・・腹が立つので、少しぐらい悪口を言わせてください・・・
マリッジハラスメント(マリハラ)、既婚者ハラスメントは本当にばからしい!
看護師の現場で、これもよく聞くのですが、結婚する人への妬み、嫉妬からくるいじめがあるようです。
これは女性が多い職場あるあるなのでしょうが、理不尽としかいいようがありません。
そしてもっと理不尽なのは、既婚者への差別、いじめです。私の妻もこれで大分いじめられました。
看護師は離婚率が高い!とよく言われます。実際の統計は知りませんが・・・・。
少なくとも妻がこれまでいた職場のいくつかは、既婚者よりも離婚者の方が多いという信じられない職場でした。
その中で、「既婚者は旦那さんの収入やサポートがあるんだからいいわよね!離婚している私たちは苦労しているんだから、私たちに融通利かせてよね!」と、いろいろな差別や理不尽なシフトを強要されていました。
もちろん、シングルマザーでがんばっている看護師ママさん達には、周囲のサポートは必要です。でも、離婚者グループから既得権のように振りかざされると、それは違うと思うのです。
妻はよく私に「なに、離婚していない私たちが悪いの?旦那さんがいると苦労していないことになるの?」と泣いて不満を爆発させていました。
マタニティハラスメントについて
こんなおめでたいことはない「懐妊」ですが、妊娠=夜勤免除=産休=産休中は人員補充無し!=既存スタッフへの負担増!という今後が見えるため、妊娠することは看護師仲間からは歓迎されないイベントのようです。
中には、師長から「妊活は仕事が落ち着くまでしばらくまって!」なんて嘘のような指示をされる現場まであるそうです。
確かに、仲間が妊娠すると負担ばかり増えるのは事実です。でも負担ではなく、「サポート」として考えたら、それはいつかは自分にも返ってくるもののはずですよね。
マタハラは何も医療現場に限ったことではなく、どの職場でも問題になっているハラスメントです。
未婚者、既婚でも妊娠できない者への負担ばかり強いられ、妊娠した人は権利ばかり主張して得してばかり。
そんな風に考える人が増えているもの事実です。
確かにその側面はあると思います。「負担が増えたおかげで、自分は婚活・妊活する時間も余裕もない!」という人の言い分もわかります。
でもそれは、妊娠した人が悪いのではなく、その状態をカバーする人材の確保(その期間だけのパート採用等)しない経営者側の問題なのです。妊娠・出産・育児を行う女性を経営者、社会全体で支えることの大切さばかりクローズアップされますが、それを支えている現場の残されたスタッフのサポートを実は考えるべきなのです。
でなければ、いつまでたっても妊婦は悪者になってしまうでしょう。
医師からの理不尽な指示や叱責
渡しが聞いている限りでは、このことで落ち込むことはあっても、転職や看護師を辞めるまで心身とも追い詰められることは少ないと思います。看護師の皆さんはいかがですか?
もし理不尽な医師がいたとしたら、その病棟の看護師全体の問題として受け取られ、看護師同志で共感し合えるからだろうと私は思います。
「あの〇〇医師、ほんとムカつくよね~!みんな迷惑してるんだから!」と共感し合え、共通の敵になってくれ、看護師仲間の団結力を高めるので、私は歓迎すべき人材だと思ったりします。
男性としてあえて偏見に満ちた発言をさせていただきますが、女性はだれか共通の敵や悪口の対象が必要な動物だと思うのです。
ですから、それがある程度地位があり強い存在である医師や師長だと孤立することはないですし、その下の看護師の結束は強くなり、ある意味で働きやすい職場になるんじゃないかな~なんて思ったりします。
ハラスメントから自分を守り、生き抜く方法
看護師の現場でのハラスメントの種類に関していろいろ議論しても、しかたありません。絶対になくならないのですから。
大切なのは、それぞれのハラスメントの内容を客観的に分析して
●ハラスメントを受ける被害者になってしまった時の対処方法を知り、それを実行する勇気を持つこと。
→自分のおかれている状況を第三者(同僚や上位者)に話し、必ず相談すること。
●逆にハラスメントをする加害者にならないように日頃から自分を客観的に見て、戒めること。
●被害の現場を見たり、気が付いた場合にちゃんとした対応が出来、被害者を救う勇気を持つこと。
だと思います。
当たり前の、おりこうさん回答。絵に書いたような机上の理論ですね。それが出来たら苦労はしないのですが。
でも、自分1人で抱え込み、悩み、心身の調子を崩してしまうのは絶対に避けないといけません。
どうしても、誰にも相談できない、相談しても解決できない、そこまでしてこの職場にいたくない!という場合は、
もう思い切って転職してしまいましょう。
幸いにも看護師は、転職先が見つかりやすい職業です。
そのメリットを使わない手はありません。嫌だったらその場から逃げるのも立派な作戦です。
逃げ出すのではなく、そんな職場、見限っちゃえ!なのです。
転職を決断したら注意する事
どんな職場でも流石にすぐに退職することはできません。どんな理由があれ、それは社会人として非常識な行動ととられ、次の転職先での悪い評判にも繋がりかねないので勝手にすぐにやめてしまうことは避けましょう。
最低限のマナーとして、3ケ月前、少なくとも1ケ月前に退職願いを出すべきでしょう。
退職の願いを出してから14日を経過する必要があります。
看護師の職場は常に人手不足ですし、シフトで回っているため1人が抜けると残ったスタッフに大きな負担がかかることになります。
通常、退職願いを出しても思い止まるよう、または暫く待つように師長からお願いされる事がほとんどでしょう。最悪のブラック職場では、退職順番待ちなんて信じられない状況も起こっているそうですね。
どうしても直ぐにでも辞めたい場合、退職の願いを出してから14日経過するのを待ちましょう。
なぜなら、職場の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となるのです(民法第627条第1項)。※ただし、期間の定めのある雇用、契約看護師などの場合は別です。
民法を盾に取れば、流石に職場でも止めることはできないはずです。
それでも辞めさせてもらえない場合は、労働基準局に相談にいくと言ってみてください。どの職場も労働基準局に目を付けられたくないはずですから辞められるはずです。
貯蓄に余裕があるなら転職活動に余裕を持って活動しましょう
貯蓄がなく直ぐに生活費に困窮する状況なら、辞める前から転職活動をしっかりしておき次の転職先を決めて辞めること。
少し休職期間が取れるようなら、次の職場探しを慎重に、比較検討できる時間を取りましょう。
その時間に、自分の看護師としてのスキル、そして今後のキャリアをどうしていきたいのか、そしてライフプラン(いつ頃結婚して子供を産んで・・)を自分なりに考えて、次の転職先を探す希望条件を明確にするようにしましょう。
とにかく、どこでもいいから早く次の就職を決めたい!
なんて焦って決めてしまうと、結局また辞めてしまうことになりかねません。
特に、ハラスメントが原因で辞めた場合、次の職場の評判や雰囲気、離職率、などしっかり調べて、同じ苦労をしないような職場を慎重に見つける事が何よりも大切です。
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